AI ハッカソンの決勝を見てきた — これからは「地に足のついた AI」が強い

先日、Findy のハッカソンの最終ピッチ(決勝の発表)を見に行ってきました。

お題は DevOps(開発と運用をなめらかにつなぐ取り組み)でした。 会場は、Google の東京オフィス(渋谷)です。

会場となった Google 東京オフィスのロゴ。

正直に言うと、行く前は「どこまで AI に全部やらせているか」を見るつもりでした。

でも、実際にファイナリストの発表を見て感じたのは、その逆でした。

派手な「全自動 AI」よりも、地に足のついた、現実的な使い方のほうが評価されていたのです。

今日は、現場で見て・聞いて気づいたことを、4つにまとめて共有します。 作る人はもちろん、これから AI とどう付き合おうか考えている人にも、ヒントになるはずです。

私自身、このハッカソンには「詐欺と戦う AI・KangaL」で挑戦しました(→ 開発記)。その立場から見ても、学びの多い決勝でした。

筆者と、「DevOps × AI Agent Hackathon(Google Tokyo・Findy 主催)」の看板。決勝を見に行ってきました。

ハッカソンの決勝で見た、これからのAIの4つの気づき。人が最後に決める・ドメイン知識が武器・要所だけAI・無料で配ってデータを取る。

「最後は人が決める」を、動かさない

ファイナリストに共通していたのは、最終的な判断は人がする、という基準をずらしていないことでした。

AI に全部を任せきるのではなく、人がやらなくてもいい作業だけを細かく切り分ける。 そこに人のチェック(ヒューマン・イン・ザ・ループ)をはさんでから、実装に移す。 発表の多くが、そういう形になっていました。

決勝の会場。大きな画面の前に審査員席が並び、参加者が発表を見守る。

全自動をめざすより、人と AI の役割分担をていねいに設計する。

この考え方は、AI と安全につきあうで書いた「最終判断は自分がする」とも、まっすぐつながっていました。

強いのは「その道のプロ」の知識

これからは、ドメイン(専門分野)に強い人が有利になる。決勝を見て、そう強く感じました。

AI が賢くなるほど、差がつくのは「根っこの問題の本質を突けるか」でした。 そして、その本質はたいてい、現場の一次知識の中にあります。

だから、本職の人に話を聞きに行くような、地道だけれど現実的な動き方が、これからさらに求められそうです。

派手な技術より、自分が詳しい分野で、本当の課題に当てるほうが強い。

一次情報が武器になるという話は、GEO の記事や、私自身の制作記録とも通じます。

AI は「高い」。だから要所だけに使う

現実的な話として、いまの AI(の推論)はまだ高い、という指摘もありました。

サービス化(SaaS 化)するとき、最初のとっかかりは AI にやらせるとしても、そのまま全部を AI に頼ると採算が合いにくい。

とくに、今回のお題だった DevOps のような分野は、AI で作り込もうとすると実装側のコスト負担がとても大きい、という実感がありました。 便利さの裏で、動かし続けるお金の話がついて回ります。

面白かったのは、「実際に問題になるのは 10 個くらいしかない」という見立てです。 よく出る少数のパターンは、AI を使わず普通のプログラムで処理できるようにしていく。 そうやって AI を使う工数を少しずつ減らし、コストを下げてペイさせる。

全部を AI にせず、本当に必要な所だけ AI にする。

賢い使い方は、性能だけでなくコストの目線からも生まれていました。

あえて無料で配って、データと入口を取る

もう一つ、なるほどと思った戦い方があります。

AI を使った技術は、いっそサービスを完全に無料(フリーミアム)にしてしまう。 そのうえで、データの収集をメインの目的に置く。 そして、集めたデータと利用者を、次のサービスを始めるときのとっかかりにする。

目先の課金より、入口とデータを先に押さえるほうが強いのではないか。 そんな見方も語られていました。

これは一つの考え方として聞いた話なので、正解というより「そういう戦略もある」くらいに受け取ってください。

見に行って、いちばん残ったこと

勝っていたのは、「魔法のような全自動 AI」ではありませんでした。

人が決めるところは人が決め、AI は面倒な部分だけを引き受ける。 自分の詳しい分野で、本当の課題に当てる。 コストまで見て、要る所にだけ AI を使う。

どれも派手さはありませんが、地に足がついていて、続けられる形でした。

まとめ

  • 最後は人が決める、を動かさない(人と AI の役割分担)
  • 強いのは、その道のプロの一次知識
  • AI は高い。要所だけに使ってコストを下げる
  • あえて無料で配り、データと入口を取る戦い方もある

初心者のうちは、「全部 AI にやらせる」より「人が決める前提で、面倒な所だけ任せる」から始めれば十分です。 そして、あなたがいちばん詳しい分野でこそ、AI は力を発揮します。

自分でも挑戦してみたくなったら、AI エージェントとは何かや、私のハッカソン開発記ものぞいてみてください。

後日談:その場で、7人の仲間ができた

最後に、うれしかった後日談をひとつ。

決勝のあと、その場で意気投合した 7 人で、そろってトリキ(鳥貴族)へ飲みに行きました。

中には、遠方から来てホテルを取っていない人もいて。 自分が泊まるホテルを教えたら、なんと同じホテルに泊まることになり、最後は一緒にお風呂につかって談笑するくらい、すっかり打ち解けていました。

技術の話も刺激的でしたが、強く心に残ったのは、こういう人とのつながりのほうでした。

オンラインで完結しがちな時代だからこそ、現場に足を運ぶ価値を、あらためて感じた一日でした。